パザパ

パザパ pas a pas ・・・フランス語で一歩一歩。頑張らずでも一歩一歩前に進める日々を願って・・・

桜咲く日に想うこと

世界が大きく揺れ動き、不気味なうねりに翻弄され続けている。この信じられない状況を一体誰が想像できただろうか?こころが一向に晴れないまま4月を迎えようとしている。そんな重いこころを慰めてくれるかのように、桜は変わらず日本の春を咲き誇っている。福岡は日本で一番早く開花宣言をして、これまた一番早く満開になった。

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桜には青い空が一番似合う。快晴の日曜日、お天気に誘われて油山の麓にある園芸公園に出かけた。昔々は子供たちと、それからお孫ちゃんと、そして夫が亡くなるまでは二人で、この場所で過ごした日々が懐かしく蘇ってくる。生きてきた歳だけ桜の思い出があり、そんな日々が見上げた桜の向こうに次々に広がっていく。

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過ぎ去った日々を思い出し懐かしむことは、決して後ろ向きの行為ではないと思う。今の私は過去の記憶で、素晴らしい体験の全記憶で生かされているのだから。桜の花の向こうに、あの時の笑顔が、あの時交わした言葉が、無言で共に見上げた桜咲く空が、今も鮮明に蘇ってくる。だから桜は一層優しく、美しく人々を癒してくれるのだろうと今年は例年以上にしみじみと思った。

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アーモンドの花も満開だった。夫が亡くなる前の春、二人でアーモンドの花を眺めた日のことを思い出した。あの日は花は終わり近くで元気がなかったし、少し肌寒い日だったから、こんなに明るい色なんだと見直してしまった。塗り替えられる記憶もある。ずっと変わらない記憶もある。過去の記憶を大事に抱え、また新たな記憶にもいっぱい出逢いたい。新年度が始まる。何か新しいことを始めたいなと少し思った。

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眠る前にベットの中で本を読むのが私の変わらない習慣。向田邦子さんの「ベスト・エッセイ」には、何度読んでも飽きない50編のエッセイが詰め込まれていて、毎晩眠る前にその1編を読むのが、眠る前の習慣になっている。こんなに生き生きと情景を語れる人はいないと思う。中原中也は落ち込んでいるときの友。どん底まで落とし込んで這い上がるための荒治療用!?!

何はともあれこうして何の心配もなく、元気に生きていることを何よりもありがたいと思い、この命がある限り誰かのために役に立つ人でありたいと願う。

夜空を背に咲く姿を、彼の地の人を思いながら、ゆっくり眠れる夜が本当にありがたくて、今夜も静かに手を合わせる。祈りの中で一歩一歩。

*最近観た映画  「金の糸」 ラナ・ゴゴベリゼ監督

*最近読んだ本  「革命前夜」 須賀しのぶ