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パザパ

パザパ pas a pas ・・・フランス語で一歩一歩。頑張らずでも一歩一歩前に進める日々を願って・・・

母が逝った日

1週間前の今日、母が静かに旅立った。小さな村にある大きな家で、祖父母を父を見送った母は、その家にもう一度帰りたいという願いは叶えられないまま、入院中の病院のベットの上で、信じられないくらい穏やかな顔で、静かに静かにその生涯を終えた。その一部始終を私はひとり、ずっと見つめ続けた。
母の急変を知らされたのは先週の木曜日。その日から祈る思いで仕事を続け、土曜日は結局レッスンを休講にして別府へ向かった。

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前夜病室に泊まってくれた弟に代わり、連日の看病で疲れ果てていた姉を家に帰し、その夜は私が母のベットの側で眠ることにした。木曜日から意識を無くしてしまった母は、全力で苦しそうに息を吸い続けていた。「お母さん、苦しいね。でももう頑張らんでいいよ」そう何度も語りかける。少し眠らなくてはと横になる。でも結局1時間ほどまどろんだだけで、また起き上がり母を見つめる。

母は口を大きく開けて懸命に息を吸おうとする。その間隔が少しずつ遠くなり、そして小さくなる。不規則に静止して、また思い出したかのように息を吸う。「お母さん!息を吸おうよ!」命の炎が細く弱くなっていく。やがてそんな懸命の姿勢が少しづつお休みを始め、その頻度が少しづつ増していった。母の命が終焉に近づいていることを知り、少し慌てた。もうこれ以上延命の処置はしないと、決めたのだから、慌てずにしっかりと母の最期を見届けなくては!私は気を取り直し、また母の側で見守り続けた。

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人は生まれ、やがて誰もが死を迎える。死に逝く人はこんなふうに最期の時に近づいていくのか。「お母さん、ありがとうね。ありがとう、お母さん!」少し冷たくなった母の手を握り、そう何度も母に言い続けた。心拍が50から急下降していく。ずっとずっと休んでから小さくか細い息をひとつ吸う。そして・・・・母の表情から苦しみが消え、穏やかな優しい顔になり、そして、母の命の炎が静かに静かに消えていった。
その瞬間、神さまの元に往ったんだ!そう思った。それほどに、母の顔は優しい光に包まれているようだった。
駆けつけた姉を見た途端涙が溢れた。「お母さん、逝ってしまったよ・・・・」看護師が医師を呼び、駆けつけた医師によって、死亡時間が告げられた。「5時20分お亡くなりになりました。」「ありがとうございました」姉と私は今まで本当に最善の処置を行って下さった先生に深く深く頭を下げた。

最近読んだ立花 隆氏著の「死はこわくない」中に、「臨終時には人間は恐れではなく、平安な夢見心地の状態に入り、そのまま死を迎えるようになる」と書かれていた。母はまさに平安の光に包まれるように、穏やかに逝った。

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家族葬でとも考えたけれど、今までお世話になった村の人たちや、親戚の人たちとも一緒にお別れしたかったので、翌日の月曜日、村に近い葬祭場で葬儀を行った。母の顔はとても綺麗で、優しさに溢れていた。私はそして姉は、母と過ごした日々をひとつひとつ思い出しながら、溢れる涙を止める術を無くし、子供のように泣き続けていた。多分一生分の涙を流してしまったかもしれないな。親戚の人たちから、母の小さい時の話や父とのことなど、知らなかった話を聞いたり、村の人たちも母の死をこころから悼んで下さった。息子が常子ばあちゃんへ、と木浦での思い出を静かに語った言葉はとても胸を打つものだった。「良かったね、お母さん。幸せな人生だったね・・・」そうしみじみと思った。

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葬儀の後はお骨になった母をみんなで木浦の家に連れて帰った。気道を切開して声を無くしてからも「か・え・る」と声にならない声で訴え続けていた母を、やっとこの家に連れて帰えることが出来た。夜は家族みんなで夕飯を食べ、賑やかな宵を過ごした。「いつまでも喋っとらんで、風呂に入らんね!!」そう叫ぶ母の声が聞こえるようだった。

忙しかった1週間が終わり、やっと母の死と改めて向かい合っている。眼を閉じると一週間前の母の姿が目の前に現れてくる。優しい母の顔と共に、「頑張らんといかんよ」そういつも言っていた母の声が聞こえる。今週末は母に会いに木浦に帰る。姉や弟と力を合わせて、あの家を守っていかなくては!「大丈夫だよ、お母さん」日が経つにつれ増していく喪失感、悲しみを胸の奥に抱きながら、今週も一歩、一歩・・・

★最近読んだ本   「死は怖くない」  立花 隆著
         「職業としての小説家」  村上 春樹著

 

 

 

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